みなし残業代制における代休取得|代休分は給与から控除されるのか

  • 作成日

    作成日

    2024/01/17

  • 更新日

    更新日

    2024/01/17

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目次

みなし残業代制における代休取得|代休分は給与から控除されるのか
会社から命じられて休日労働をした場合に、その代償として「代休」を与えられることがあります。
また、これと混同しやすい言葉として「振替休日」というものがあります。

「代休」と「振替休日」は、似たような言葉ではありますが、その中身としては、大きく異なる点があります。
それは、「代休」が休日労働とされるのに対して、「振替休日」はそうではないということです。
それに伴い、割増賃金を計算する場合の扱いも変わってきます。

特に、みなし残業代制のもとで働いている場合、代休を取った場合の割増賃金の計算方法については注意すべき点があります。
今回は、休日労働や代休といった言葉の意味や、代休取得が給与に与える影響などについて、解説していきます。

そもそも休日労働とは?代休と振替休日の相違点について

(1)休日労働とは

「休日労働」とは、「法定休日における労働」のことを意味します。
労働基準法第35条では、使用者は労働者に対して、休日を「週に1日以上」または「4週間に4日以上」与える必要があると規定されており、この休日のことを「法定休日」と呼んでいます。

1項 使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない。

2項 前項の規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない。

引用:労働基準法第35条

休日労働手当の支給対象は「法定休日」における労働のみであり、「法定外休日」における労働に対しては、時間外労働手当が支給されます。

土日が休みの会社では、土日のどちらかを法定休日にし、それ以外を法定外休日とします。

自営業で特定の曜日が定休日であるような場合は、その曜日を法定休日とすることも可能です。

(2)代休とは

代休とは、「休日労働が行われた場合に、その代償として以後の特定の労働日を休みとするもの」をいいます。
代休の場合は、前もって休日を振り替えたことにはならないため、休日労働分の割増賃金を支払う必要があります。
休日労働をした場合の割増分は35%です。

法定休日には法定労働時間が存在しないため、休日労働をした場合の時間外労働には割増賃金が発生しません。そのため、休日労働の割増賃金と、時間外労働の割増賃金は、重複して適用されないのです。

(3)振替休日とは

一方で、振替休日とは「あらかじめ休日と定められていた日を労働日とし、そのかわりに休日とした他の労働日」のことをいいます。

これにより、あらかじめ休日と定められていた日が労働日となり、別の労働日が休日となるため、振替後の労働日に働くことは、単に労働日に労働をしているにすぎないため、休日労働にはなりません。

そのため、事前に振替休日を設定していた場合には、その代わりにもともと法定休日の予定だった日に働いたとしても、休日労働に対する割増賃金は発生しないことになります。

みなし残業代制でも代休は取得できるのか

みなし残業代制かどうかは、代休を取得することができるかどうかには関係がありません。
代休が取得できるかどうかは、あくまで会社の制度によって決まります。

代休制度が就業規則や雇用契約書に記載されている場合は、その規定によります。
代休が制度として規定されていない場合、一般的には、代休の付与については会社の裁量によるため、会社は代休を許可しないこともできます。
休日出勤をした場合は自動的に代休が付与されるといった規定の場合は、みなし残業代制を採用しているからといって、代休を取得させないとすることはできません。

みなし残業代を休日出勤分に充てることで、休日労働の割増分の支給とするのみで(法定休日に出勤したケースで、みなし残業代が法定休日労働の割増分を含むものでなければ、別途その割増分の支給が必要となります)、代休を付与しないとすることの可否は、雇用契約や就業規則の内容を勘案する必要があります。

みなし残業代制での代休取得についてお悩みの方は、弁護士に相談し、法的に分析してもらうと良いでしょう。

みなし残業代制での休日労働の割増賃金について

みなし残業代制を採用していても、みなし残業代に休日出勤の割増賃金が含まれていない場合には、労働者が法定休日に出勤すれば、使用者は、休日出勤分の割増賃金を別途支払わなければなりません。

法定休日に休日労働をした場合の割増賃金は、基本給を35%割り増しして計算します(1時間当たりの賃金額×1.35×休日労働時間=割増賃金額)。

法定休日以外の休みに休日労働をした場合の割増賃金は、基本給を25%割り増しして計算します(1時間当たりの賃金額×1.25×休日労働時間=割増賃金額)。

たとえば、会社が週休2日制を採用し、日曜日を法定休日と定めている場合に土曜出勤をしたとします。この場合、法定外休日の出勤であり、時間外労働と同様の扱いになります。つまり、割増率は25%です。

この割増賃金の計算にあたっては、まずその基礎となる「1時間当たりの賃金額(基礎賃金)」を計算します。
「1時間当たりの賃金額」は、月給制の場合、「月の所定賃金額÷1ヶ月の(平均)所定労働時間数」によって算出します。

このとき、「月の所定賃金額」には各種手当も含まれますが、労働と直接的な関係が薄く、個人的事情に基づいて支給されるという性質を持つ以下の各手当については、除外できます(労働基準法第37条5項、労働基準法施行規則第21条)。
  1. 家族手当
  2. 通勤手当
  3. 別居手当
  4. 子女教育手当
  5. 住宅手当
  6. 臨時に支払われた賃金
  7. 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

代休取得による控除について

みなし残業代制は「実際の残業時間がみなし残業時間以下だったとしても決まった残業代が支払われる」という制度です。代休を取得したからというだけで、みなし残業代は減額されません。

休日出勤して代休を取得した場合には、勤務時間が同じでも、休日出勤分の割増賃金が支払われます。

もっとも、代休とした勤務日は働いておらず、その日の賃金は発生しませんので(ノーワーク・ノーペイの原則)、その分が控除されます。

月給制の賃金であることを前提に説明しますと、会社が予め勤務するものと定めた日・時間どおりに働けば、月の基本給全額が支給されます。しかし、休日出勤をしたとしても、もともと会社が勤務するものと定めた日を代休とした以上、代休とした1日分は控除されるべきです。
法定休日に出勤したことについては、前述のとおり、休日労働の割増賃金が支給されるものの、上記1日分が控除されます。実際の割増分の支給額は、下記の例ですと、1時間あたりの基礎賃金に135%を掛けたものではなく、35%を掛けたもので計算されます。

例:
1時間当たりの基礎賃金を2000円とする。1日8時間労働と定められたものとする。

  1. 法定休日に休日出勤し8時間働いた場合の賃金
    =2000円×1.35×8時間=2万1600円
  2. 代休を取得した1日分の賃金
    =2000円×8時間=1万6000円
    実際に支払われる割増賃金は
    2万1600円-1万6000円=5600円(2000円×0.35×8時間)

代休の取得には期限がある?

代休については労働基準法で詳細が定められておらず、代休の法定取得期限も特にありません。

もっとも、会社が代休制度を設けている場合 、就業規則に定めた代休取得の申請期限を過ぎると、原則として代休は与えられないことになります。

例えば、就業規則の規定が「代休は休日出勤した日から1ヶ月以内に申請すること」となっている場合、1年前の休日出勤に対する代休は付与されません。
休日に出勤し、事後的に代休を取得したい場合には、会社の就業規則や労働契約の内容を事前に確認しておくとよいでしょう。

【まとめ】労働問題でお悩みの方は弁護士にご相談ください

代休とは、休日に労働した場合に、代償として後の特定の労働日を休みにすることであり、前もって休日を振り替えたことにはならないため、使用者は労働者に対し、休日労働分の35%の割増賃金を支払う必要があります。

もっとも、休日労働の割増賃金と時間外労働の割増賃金は重複して適用されることはありません。

みなし残業代を休日出勤分にあてて代休の代わりにすることが違法かどうかは、法に代休に関しての詳細な規定がないため、雇用契約や就業規則の内容を勘案する必要があります。

みなし残業制での代休取得など、労働問題についてお悩みの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。
この記事の監修弁護士

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

髙野 文幸の顔写真
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